還暦過ぎても白メガネ

いい歳ぶっこいてチャラいメガネを愛用する勘違い爺。

第9回:命を救ってくれたSPIVVY

時代は令和へと移った元年8月17日(土)、別ブログのネタ探しで二子玉川へ。

夕闇迫る多摩川沿いで写真撮影を済ませ、涼を求めて駅前にあるライズへ。
足が自然に向いてしまった3階、金子眼鏡でまたまた白メガネに遭遇、
オールチタンでオール白の憎い奴はSP-1164
白メガネ好きたる者、これを無視してよいものか。

かくして速攻で買い求めたが、話はここからが本番。

約2か月後の同年10月31日(金)、知人と中目黒のスペインバルで痛飲した。
生2杯~白グラスワイン1杯~ラプランタ(スペイン赤/テンプラニーリョ)2人で1本。

ここまで飲んだのは覚えている。

逗子まで帰る知人が先に店を出たのが23:30、
一緒に帰ればよいものを、なにを調子に乗ったか、
その後もカウンターで延々飲み続け、ようやくおいとましたのが25:00。

店の前の大通りを反対側に渡り、タクシーに7~8分ほど揺られ、
最寄り駅近くで降りた…はずだ。

そこから自宅集合住宅までは徒歩でほんの3~4分、歩き出したはいいが、
気がつくと道路に突っ伏している。

何かに躓いたかとヨロヨロ起き上がるも、足がまったく前に出ない。
そうこうするうち身体中に衝撃が走り、気がつくとまた倒れている。

そんなことを恐らく何度か繰り返し、ようやく自宅集合住宅の玄関が見えてきた。
エレベーターを降り、玄関を開けると同時にそのまま倒れ込む。
愛妻の悲鳴にも似た甲高い声が遠くで聞こえる。

自室まで歩いていくことすらできず、這うようにして居間に転がり込み、
愛妻が自室のベッドから運んできてくれたマットに横たわって気絶。

翌朝目覚めるとタオルは血で染まっている。
どうにか起き上がり洗面所に辿り着くと、鏡の向こうに待っていたのは
KO負けを食らったボクサーの如く破壊された顔面。

左眉と左頬に大きな腫れと擦り傷、上唇もひどくめくれ上がっている。
事ここに至って、ようやく事態が飲み込めてきた。

愛妻が後で店にお詫びかたがた電話して確認したところによると、
その後ラプランタをさらに1本、その上ハイボールを4杯。
普段のオレからすれば信じられないほどの大量の酒を浴びたことになる。
正気の沙汰とはとても思えない、文字通り悪魔の所業。

しかし店のオーナーによると、
幸いにもほとんど酔った素振りも見せず、普通に店を出たとのこと。
タクシーに乗って一気に緊張の糸が緩むと同時に酔いが襲ってきたということか。

で、メガネは?

顔面左から地面に激突したらしく、フロント左上には引っ掻いたような擦り傷があり、
その部分は白い塗装も見事に剥げ落ちている。
フロントとテンプルの接合部にもかなりの負荷がかかったようで、
テンプルは救いようもないほど、グニャリと曲がってしまっている。

ああ、このメガネをかけたのはまだ2回目だったのに…まさに天罰。

そんな悪夢から1か月と20日、
心の傷はまだ癒えないが、顔面の傷跡も目立たなくなった同年12月21日(土)、
二子玉川の金子眼鏡へ、恥を忍んで白メガネの修理の相談に出かけた。

「メタボおやぢのダイエット日記」は諸事情により現在限定公開となっているので
同日の記事へリンクを貼る代りに該当箇所を転載する。

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一度塗装を剥がし、研磨した上で再度塗装を施すことになるが、
アスファルトに激突した傷跡が完全に払拭できるかは微妙とのこと。
ひとまずお預けして2ヵ月後の修理上がりを待つことにする。

預り証に記入しながらH店長がポツリと漏らす。

「このメーカーのメガネはチタン製なので実に頑丈だから、
この程度の破損で済んだともいえるでしょう。
これがもしごく一般のプラスチックフレームであったら、
恐らく完膚なきまでに破壊され、ひいては
失礼ながらお顔にもっと酷い傷を負ったかも知れません」

顔の傷だけならまだよい。
万が一にも眼球が損傷を受けたり、最悪、脳挫傷というケースも考えられる。
このSPIVVY SP-1164は、まさしく愚かなオレの身代わりになってくれたと言えよう。

そう考えると、たとえ修理後に傷跡が残ったとしても、
自分への戒めの意味も込め、お守りとして謹んで使わせていただこうと思う。

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そして2か月後の令和元年(2020)2月22日(土)、
修理が完了したとの連絡を受けて二子玉川に向かった。

例え塗装し直していただいたとしても、あの深い傷が消えるはずもない。
H野店長から手渡されたメガネを恐る恐る手に取って問題の箇所を見ると…

あれだけの傷がウソのように消えている、まさに新品同様ではないか!

「実は同じ型番のフロントが予備として1つだけ残っておりまして、
それと交換しましたので、フロントに関して言えば新品です」


なんという幸運、というよりなんと素晴らしいご対応であろうか。
H野店長や修理をご担当いただいた方に心より感謝申し上げたい。

しかし、この白フレームを見るたびに、
ありがたいやら、恥ずかしいやら、申しわけなかったやらで
なんとも複雑な感情が胸にこみあげてくる。

それは、取り外されて廃棄されたあの擦り傷だらけの白いフロントが、
オレの心に残してくれた教訓のようだ。
SPIVVY SP-1164
やがていつかこのメガネとともに棺桶に入ろう、かけてくれる人がいれば。
  
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